毎年度の放送番組の中から、「放送人の会」会員が推薦した番組を審査し、顕彰する。"放送人の放送人による放送人のための賞"。
| 【グランプリ 大賞】 | NHK大河ドラマ「光る君へ」 |
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放送日:2024年1月7日~12月15日・全48回 作:大石静、音楽:冬野ユミ、 制作統括:内田ゆき、松園武大、演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろう 他、 出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、佐々木蔵之介、段田安則、 他 <贈賞理由> 「光る君へ」は、平安中期を舞台に「源氏物語」の作者・紫式部を主人公とした異色の大河ドラマでした。戦乱の世や武者たちの合戦シーンを中心とする従来の大河とは一線を画し、平安の女性作家たちが物語の力で人の心を、ひいては国を動かすという新しい大河として広く支持されました。 恋愛ドラマの名手と言われる大石静さんの脚本らしく、のちに紫式部となる、まひろと藤原道長の恋愛も情感豊かに描かれましたが、本作の主軸は、貧しい下級貴族の出であるまひろが、物語を書くことによってフィクションの世界で想像の翼を広げ、自由になっていくところにあったのではないでしょうか。熾烈な権力闘争の結果、天皇を凌ぐほどの最高権力者に上り詰め、やがて己を失い、まひろに依存していく道長の思惑とは対照的に、物語の力で自由で強い女性へと変貌していくまひろの姿は、閉塞感のある現代を生きる視聴者の心を捉え、勇気づけてくれました。 脚本家の大石静さん、制作統括の内田ゆきさん、チーフ演出の中島由貴さん、作曲家の冬野ユミさんら女性たちが率いた制作陣も、大河ドラマの歴史に新しい1ページを刻みました。資料の少ない平安時代の衣裳をはじめ、和歌、漢詩、書道、五節の舞、曲水の宴などの雅な文化と、陰陽師や呪詛など魔術的な側面という、中世の光と影を丁寧に表現した美術や技術スタッフ、抑制の効いた自然な演技で1年間を駆け抜けた吉高由里子さんや柄本佑さんをはじめとする俳優陣にも賞賛を送ります。 |
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| 【グランプリ 優秀賞】 | 福井テレビ開局55周年記念ドキュメンタリー 「罪の壁 危険運転致死傷罪の23年」 |
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放送日:2024年4月28日(日)午後2時~ プロデューサー:横山康浩、ディレクター:武澤貴之、青園大亮、取材:菅野佑斗、ナレーター:中村優子 <贈賞理由> 今年2月、法務大臣から法制審議会に「危険運転致死傷罪」の適用基準を見直すよう、諮問がありました。きわめて無謀な運転で死者を出した事故でも、裁判では罪の軽い「過失致死罪」で処理されるケースが相次ぎ、世論の批判が強まった結果です。そのきっかけの一つになったのが、昨年4月、福井ローカルで放送されたこの番組です。 福井市内の住宅街の交差点に猛スピードで突入し、18歳の女子大生を死亡させたにもかかわらず、裁判では単なる過失運転とされ、控訴もできない状況で確定してしまった裁判の結果に、記者が疑問を持ち、福井の事故だけではなく、全国の同じケースの事例を徹底的、網羅的に取材し、遺族や法曹界の声を拾い、「何故、危険運転致死傷罪適用に壁があるのか」を突き止める。 番組が伝える、被害遺族たちの<法は正義であるべきだ>との願い、判例主義や前例主義に囚われすぎてきた法律家たちの<知的怠慢>だったという指摘は、私たちを深く納得させるものです。地域放送ならではの丹念な取材が、社会にインパクトを与えたことは、公共的存在としての放送の価値を改めて認識させるものとなりました。 |
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| 【グランプリ 優秀賞】 | 「ニュースパレード」 文化放送とNRN加盟33局 |
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放送日:月~金 17:00~17:15 担当:首藤淳哉(文化放送 コンテンツ局 報道スポーツセンター 部長)、加藤慶(コンテンツ局 局長)、 キャスター:永野景子(報道スポーツセンター)、鈴木純子(制作部) <贈賞理由> 「ニュースパレード」は、文化放送をキーステーションに、全国33のラジオ局で同時生放送しているニュース番組です。1959年5月1日に放送開始以来、66年の長きにわたり、日本国内、世界各地で起きた事件や事象を中心に、取材現場からの中継なども交えて、各局が取材した「その瞬間」の取材音源を伝え続けています。 60年安保闘争における国会議事堂周辺でのデモ隊と機動隊の衝突現場の生々しい音声をはじめ、文化放送にしかない音声である1963年の「吉展ちゃん誘拐殺人事件」での犯人逮捕のきっかけとなったインタビューや、1970年の「三島由紀夫割腹事件」ではマスコミで唯一全録音に成功した最後の演説などの歴史的スクープを数多く残してきました。 昭和、平成、令和を通じて、ラジオ報道の王道であり、その基本となる録音構成を守り続けてきた意義は貴重です。さらに、この番組が、NRN(全国ラジオネットワーク 文化放送・ニッポン放送系)加盟33局の報道機関としての社会的価値の底上げに貢献し、ラジオ記者育成の環境を作り続けた功績を称えます。 |
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| 【グランプリ 優秀賞】 | NHKスペシャル「封じられた“第四の被曝”-なぜ夫は死んだのか-」 |
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放送日:9月15日(日)21:00~(54分) 語り:松尾スズキ、撮影:鈴木裕高、音声:吉川学、鈴木彰浩、映像デザイン:潮崎恭平、CG制作:神田紗良、映像技術:小島碧波、編集:林洋三、音響効果:高石真美子、コーディネーター:柳原緑、リサーチャー:ウィンチ啓子、五十嵐哲郎、取材:山下哲平、山下達也、ディレクター:横里征二郎、 制作統括:高比良健吾、宮原修平、三村忠史、制作:NHK大阪。 <贈賞理由> 冷戦下、日米の国家戦略ゆえに「覆い隠された“第四の被曝”」、その真相を露わにした力作です。1945年の広島と長崎への原爆投下、54年の第五福竜丸事件。この三つは教科書に載っているが、その4年後の出来事については載っていない。 58年7月、国際地球観測年計画の一環で海流調査をしていた海上保安庁の測量船と巡視船がビキニ環礁でアメリカの水爆実験に遭遇、乗員113名が放射線を浴びる。「日米安保条約の改定調印」を1年余に控えて、両政府は意図的な情報操作で事件を見えなくしてしまう。反核感情を刺激しない、原子力平和利用を進めたい・・・。59年夏、測量船の首席機関士が急性骨髄性白血病で亡くなるが、その妻に、国は「これは『秘密』だからと」口止めをする。遺体検査をした国は「被ばく線量は微量で『白血病とは直接関連がない』」と結論。妻は宿命と思う。 66年を経て、番組は緻密な取材で情報操作の実態を解き明かし、船員の残された歯から被ばく線量を計測、広島の爆心地から1.8㎞の被ばくに相当することが判明する。 番組は、<核が何をもたらすのか?>を、我が事として問い続けよう、そう訴えてもいるのです。 |
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| 【グランプリ 特別賞】 | 「阪神・淡路大震災30年関西民放NHK連携プロジェクト」 |
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藤島新也(NHK大阪)、藤岡勇貴(サンテレビ)、福本晋悟(毎日放送)、古川昌希(朝日放送テレビ)、山崎將(テレビ大阪)、川崎晋平・樋口耕平(関西テレビ)、佐藤翔平(読売テレビ)、事務局:豊田研吾(NHK大阪)、京田光広(NEP近畿) <贈賞理由> 1995年の阪神・淡路大震災から30年。報道の最前線にいたアナウンサー、ディレクター、記者、カメラマンらが第一線を退くタイミングを迎えている。今の現場の主役は、震災後生まれの若手たち。 一方で南海トラフ巨大地震が危惧される中、ネット空間では真偽混在の情報があふれ、放送が果たすべき役割は大きく、責任は重い。 震災の記憶と体験を継承し、命を守る災害報道を目指して関西の民放6社(ABC朝日放送、MBS毎日放送、KTV関西テレビ、YTV読売テレビ、TVOテレビ大阪、SUNサンテレビ)とNHK大阪放送局が連携プロジェクトを立ち上げた。 プロジェクトでは、局の垣根を超えた7社合同の若手勉強会の定期的開催、南海トラフ巨大地震で大きな被害が予想される地域でフィールドワーク、地元自治体との意見交換も行った。震災関連の番組には『守りたい、だから 伝える』という共通のテーマ、ロゴ、ジングルを設定し、強くアピールした。各局の番組の他、過去番組の上映会や災害報道に関するシンポジウムも開催し、広く市民にあらためて地震、防災について考える場を提供した。 ―――これらの活動を高く評価し、今後の展開への期待を込めて賞を贈ります。 |
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| 【グランプリ 特別賞】 | 手塚孝典さん (SBC信越放送) |
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<贈賞理由> 終戦から80年が過ぎ、満蒙開拓の記憶は次第に薄れてきています。しかし、その傷跡は今もなお深く残っており、消えることはありません。帰国した残留孤児や2世、3世のなかには、高齢化や言葉の壁、習慣の違いから周囲に溶け込めず、孤独な生活を強いられている人もいます。 この背景には、国の政策によって送り出したにもかかわらず、戦後はその責任を個人に転嫁し、県や市町村の責任が問われることなく今日に至っている事情があります。 手塚孝典氏は、20年以上に渡って、加害と被害の実態を当事者へのインタビューを通じて掘り起こし、明らかにしてきました。地元の長野県は全国一の送出県であり、今でも多くの問題を抱えています。 2011年に放送されたSBCスペシャル「祖国に在りて~中国帰国者の終わらない戦後~」では、人間らしく生きたいと願う帰国女性が尊厳を傷つけられ、「帰ってきて本当に幸せだったのか」と自問する心の内を描きました。 また、昨年放送された「沈黙の奥底~河野村分村が問いかけるもの~」では、集団自決を遂げた開拓団の送出責任に苦しみ、自害した村長の心の軌跡を孫の視点から明らかにしました。 いずれも、取材対象者との信頼によって忘れられつつある課題を掘り起こした佳作です。 手塚氏の長年におよぶ努力と地域への貢献を評価し、称えます。 |
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| 【グランプリ 特別賞】 | 落合恵子さん |
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<贈賞理由> 落合恵子さんは、まだパーソナリティという呼び名が一般的ではなかった1960年代後半から、70年代にかけて深夜放送の語り手として、若い世代のみならず夜間働いている人たちに絶大な人気を博しました。 さらに80年代後半にはスタッフ全員が女性という番組「ちょっと待って MONDAY」で、しなやかに、時には力強く、ジェンダーギャップの問題や国のエネルギー政策の危うさを指摘するなど、常に時代の何歩か先の道を示してくれました。というよりラジオこそ当たり前の視点が必要であることを、マイクの前で静かに訴え続けました。 その一方で作家として活動し、さらには絵本の専門店クレヨンハウスを主宰するなど、その活躍は多岐に及びます。とくにライフワークとも言える絵本に関しては現在もNHKラジオ「マイあさ!」のなかの「絵本の時間」で、毎週一冊をとりあげながら想像力の大切さを訴えています。 半世紀以上にわたって、ラジオにしかできないことを静かに語り続けた活動を、ここに称えてやみません。 |
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